この本を読み終えたらオオカミが愛おしくなった。特に最後の頁に掲載されている写真は必見です。オオカミはイヌの先祖で共通点も多いことを忘れてはいけないと思った。
西洋ではオオカミは、「赤ずきん」や「三匹のこぶた」に登場する狡猾で残忍な生き物と思われてきた。そして家畜を襲う害獣とみなしてきた。逆に日本では大神としてあがめられていたところもある。
本書の作者のジム& ジェイミー・ダッチャー夫妻は1990 年から6 年にわたり、米国アイダホ州ソートゥース山脈の麓でオオカミを移植し、その群れに囲まれてテント生活を送り、めったに人の目に触れることのない彼らの社会生活を観察して記録に残した。そのドキュメンタリー映画はエミー賞を受賞している。本書は文章としての記録と言える。
しかしながら米国には、反オオカミ派というべき人が多くいる。保護されている地区の外に出たとたん、罠と銃が待ち構えているのだ。米国は昔からの銃社会ということもあるのだろう。
作者夫妻は、2005 年にNPO「リビング・ウィズ・ウルブズ」を設立し、オオカミの保護や人との共生を進める手立てを探るとともに、講演活動などを通じてオオカミの真の姿や彼らの経験を人々に紹介しているそうだ。
日本では昨今、クマが人里に出没し駆除される事例が増えている。「クマを殺すな」の声もそれなりに大きい。どこでも野生動物との共存は難しい。