晴耕雨読と〇部録

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『望月のあと (覚書源氏物語『若菜』) 』 森谷明子

 平安王朝推理絵巻その三である。今作は源氏物語で唯一上下巻に分かれている「若菜」の帖を題材にしている。

 都では盗賊や放火が相次ぎ、さらに帝の譲位が取りざたされる中で、紫式部は「若菜上下」を執筆中である。そんな中で訪れた屋敷で、時の権力者藤原道長が瑠璃という姫を密かに住まわせているのを知る。紫式部はこの瑠璃と道長をモデルに「若菜」を書き続ける。

 そして、源氏物語では登場人物は男性なら官職で、女性なら(紫式部が勝手につけた)通称で呼ばれる。「瑠璃」という個人名で呼ばれるのは、なぜか玉鬘ただ一人である。

 今作は謎解きミステリ色は強くない。源氏物語がどのように書かれたのかを描写しているのだ。また第1作「千年の黙」と第2作「白の祝宴」を読んでないと、よく分からない話が出てくる。逆に読んでいる人ならば、ニヤリとする場面が出てくる。

 また今年7月に、このシリーズの4巻目が文庫書下ろしで出版されるとのこと。何と13年ぶりの続巻で、第1巻からだと21年の時を経ての完結となるらしい。

 

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