デビュー作の『千年の黙』、『白の祝宴』、そして『望月のあと』と続いた平安王朝推理絵巻が21年を経て完結となる。ストーリー的には、第1巻の『千年の黙』のエピローグに繋がっている。
紫式部(香子)は既に出家し、宇治にある寺の庵で暮らしていた。そして、すぐ近くには藤原道長の別荘があり、その近辺で事件(?)が起こるのだが…
本作は香子が宇治十帖を書き上げる話と、彼女に以前仕えていた阿手木が遭遇した刀伊の入寇の話がメインとなっている。この時、阿手木は太宰府の権帥となった藤原隆家の家人源義清の妻として、九州へ共に赴いている。
本作では、源氏物語の中でも作者別人説が強い「匂宮」、「紅梅」と「竹河」の三帖についての作者なりの「解答」が示されており興味深い。また、以前の三作に登場したした人物も幾人かでてくる。しかし、これら三作にある彼ら彼女らのエピソードを読んでいないと分かりにくいと思える。三作を読むことをおすすめする。
また、香子の娘賢子も彰子太皇太后の女房として出仕しており、その後もかなりの出世をすることになる。その処世術の片鱗が伺えて面白い。
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