晴耕雨読と〇部録

ビブリオバトル、茶トラネコ、書評、日々の雑感などを書き連ねる

『ザリガニの鳴くところ』 ディーリア・オーエンズ

 2021年本屋大賞翻訳小説部門第1位。ノースカロライナ州の湿地で、若い男性の死体が発見される。事件か事故か? 疑いの目は、「湿地の少女」と呼ばれるカイアへ向けられる。
 
 彼女は6歳で家族に見捨てられ、たった一人で湿地の小屋で生き抜いてきたのだ。学校にも通わない彼女に読み書きを教えてくれた少年テイト。何かと面倒を見てくれるジャンピンとメイベル夫妻の存在に救われる。

 そんな中、成長した彼女に近づくプレイボールのチェイスだが、前述のように死体で発見され、殺人容疑でカイアは逮捕される。1960年代いまだ人種差別が残る田舎の町。さらに白人間でも、貧乏白人(White Trash)と呼ばれる人々に対する偏見がある中で、彼女の裁判が開かれる。

 ミステリとしての謎解きの面白さといったものは、あまり強くはない。謎解きよりも情景がよく書き込まれてる。後半にたびたび差し込まれるアマンダ・ハミルトンの詩とともに、この本の魅力と言えるだろう。実はこの詩人は〇〇なのだが。